犬や猫は人より早く歳をとる生きもの。限られた時間の中で、心もからだも穏やかな暮らしが続けられるよう、日々の中でできるケアを心がけていきましょう。
人が赤ん坊の時、「守り手」となってくれる犬や猫。
幼年期には「遊び相手」に。
そして少年期から大人にかけては、「よき理解者」となってくれるでしょう。
一緒に年を重ねてきた、お互いにとって大切なパートナー。
しかし、犬や猫と人間とでは、年をとるスピードに違いがあります。
そのことを正しく理解し、
ライフステージにあったケアをしていくことで、
愛犬、愛猫をただ単に長生きさせるだけではなく、
健康寿命をのばし、お互いに幸せな時間をできる限り長く、
一緒に過ごすことを目指していくことが大切だと感じています。
犬や猫のライフステージについて
最近では、人の世界と同じく、犬や猫も食事の質や医療の向上によって平均寿命がのびてきましたね。
一般社団法人ペットフード協会による2017年の調査では、犬全体の平均寿命は14.19歳。
猫全体の平均寿命は15.33歳と発表されています。
またさらに、犬は超小型犬・小型犬の寿命が長く、猫は“家の外に出ない”場合、16.25歳という結果でした。
犬や猫のライフステージは、同じ犬種や年齢であっても個体差があり、一概に同じには考えられないとも言われていますが、
一般的には次のような区分となっています。
<一般的な犬猫のライフステージ>
サイズ | 目安体重 | 哺乳期 | 離乳期 | 成長期 (幼年期) |
維持期 (成年期) |
高齢期 (シニア期) |
小型犬 | 8kg以下 | 〜8-12ヶ月 | 〜 | 7歳〜 | ||
中型犬 | 8〜25kg | 生後〜2週間 | 〜7-8週間 | 〜12-18月 | 〜 | 7歳〜 |
大型犬 | 25〜50kg | 〜18-24ヶ月 | 〜 | 6歳〜 | ||
猫 | 全体重 | 〜12ヶ月 | 〜 | 7歳〜 |
7歳前後から高齢期に入る犬や猫は、平均寿命と照らして考えても、生涯の半分以上をシニアとして過ごすことがわかります。
「7歳なんて、まだまだ若い!」と感じることも多いと思いますし、実際に一緒に暮らしている中での7年間は、本当にあっという間に過ぎていくことと思います。
ですが、すぐに目には見られなくても、からだが必要とする栄養や生活は、徐々に、そして確実に変わってきています。
シニア期のからだにあった食事に切り替えることはもちろん、環境や生活も少しずつ変化させていく必要があることを忘れてはいけません。
年齢によるからだの変化
7歳前後を目処に、少しずつ老化が始まってくると、犬では被毛が白っぽくなってきたり、耳が遠くなってきたり、猫では、視力や聴力が衰えてきたり、睡眠時間が増えるといった変化が見えはじめます。
また、どちらも徐々に動作がゆっくりと鈍くなっていきます。
食事の面では、シニア期用のフードへの切り替えが必要となりますが、嗅覚の衰えによって食べ物に興味がなくなってくると、だんだんとごはんを食べなくなり、体重の減少につながってしまうなどの変化もでてきます
。
ごはんを食べなくなってしまう原因には、口腔トラブルが起きている場合も多いため、定期的なチェックや、お口のケアも欠かせません。
また、フードは噛みやすく消化しやすい形状のものに切り替えたり、ごはんの場所へ誘導する、嗜好性を高くするなどの工夫が必要となってきます。
運動量としては、無理に激しい運動をさせる必要はなくなってきますが、筋肉量が低下してきますので、そのことによって胃腸の動きが遅くなったり、皮下脂肪が増えやすくなってきます。
定期的な運動は、筋肉量の維持につながりますし、オーナーさんと一緒に遊んだり、適度に刺激を受けることは、認知症の予防や進行を遅らせるのにも効果的ですので、楽しめる範囲で続けていきましょう。
その他に、高齢の動物は、枯渇感の低下から脱水を起こしやすくなることも注意したいことの1つです。
水分不足は、循環血液量や排尿量を減少させ、心臓や腎臓に負担をかけることになりますし、尿結石の原因にもなってしまいます。
お水を飲みやすい環境づくりや、風味をつけて飲水量をあげたり、手作りごはんからの水分摂取量を増やすなどの工夫が効果的です。
シニア期にあった環境づくりを
犬の場合は、室内に段差をなくしたり、ラグマットを敷いて、弱まってくる関節のサポートをしていきましょう。
また、高齢化が進み、介護が必要になってしまった場合に備えて、若いうちからケージに慣れさせておくことも、室内環境を整えるうえでできることの1つです。
猫の場合も、腰や関節に負担がでてくることがありますので、ベッドの置き場所を低い位置に変えたり、高いところへ登るなら、ステップの数を増やしてあげると良いでしょう。
また、トイレの設置数や場所を増やすと、発症しやすい尿路関連のトラブル防止につながります。
その他、年齢を重ねるにつれて発症しやすくなる病気には、犬では心臓病や白内障など、猫では腎臓病などがあげられます。
シニア期に近づいてきたらとくに、定期的な検診をマストに、また、食事にプラスできるサプリメントなども有効に活用しながら、ケアを心がけていきましょう。
人も、犬も、猫も、みんなシニア世代になれば、からだに変化がでてくるもの。
言葉を持たない犬や猫だからこそ、なるべくすぐに変化の兆候をとらえてあげられたらと思います。
動物との暮らしの中で、いつか必ずやってくる別れの時。
その時まで、お互いの心をより深くかよわせて、心もからだもできるだけ穏やかな暮らしを続けていけますように。